企業のホームページやCM、新聞記事などにおいて、今や「サステナブル」の文字を一度も目にしない日などない。世はまさにサステナブル流行りである。皮肉ではない。確かに、一部においては、耳ざわりの良い便利な枕詞として付されている向きもないではないが、多くは「今あるものや制度、便益を持続可能なものにするために」という真摯な問題意識が基底にある。背景にある少子高齢化や人口減少、気候変動といったマクロでの諸課題がそれだけ切実、かつ深刻ということであろう。
問題は、サステナブルなものにするには「現状の何をどう能動的に変える(もしくは諦める)」必要があるかである。もちろん、例えば「物流」一つを取ってみても、一般消費者向けの宅配サービスと鉄鋼のような産業財の企業間物流を同列には扱えないように、同じテーマでも焦点を当てる事象や立場によって処方箋も様々で、普遍的な一般解などあろうはずもない。しかし、ケースに応じた特殊解から打ち手を考察する手がかりを得ることはできよう。
そこで当支部では、数ある対象の中から(1)食と農、(2)祭礼文化、(3)企業経営の三つの分野に絞って「持続可能性」を問い直す。いずれも地域社会を形づくる重要な要素であり、文脈の異なる他所の好事例から呉の好転、別言すれば呉そのもののサステナビリティに資する要諦を探りたい。具体的には、以下の3委員会を中心に記載の主題に基づく各種講演や視察研修、フィールド調査などを向こう二年にわたって実施する。隣接・派生する諸問題についても取材し、先進事例の発掘と共有に努めたい。
(1)食と農の未来づくり委員会
・函館におけるローカル・ガストロノミーへの取り組みとその成功要因
・インフレ時代の農業マーケティング
(2)祭礼文化伝承委員会
・江戸期から続く伊予西条の祭礼風流:変遷と伝承の300年史
・1000年の歴史に幕を下ろした奥州・黒石寺蘇民祭に見る祭りの本質
(3)経営アカデミー委員会(特別委員会)
・成熟産業の脱コモディティ化:「ものづくり」から「価値づくり」への転換
・ファミリービジネスにおける事業承継と企業変革