文化振興委員会(坪井委員長)では2月2日から3日にかけて、伝統の食や子どもたちへの食育に積極的に取り組んでいる島根県雲南市、出雲市に向けて「先進地視察会」を開催した。
同委員会が取り組んでいる“伝統の食の復活や食育”について、先進地を視察することでより一層理解を深めていこうと、坪井委員長、アドバイザーの平山友美氏をはじめとし会員ら16名が参加した。
先ずは1960年代から有機農業に取り組んできた雲南市木次町を訪れ、スローフードのシンボル農場として開設された「食の杜」にある「ワイナリー奥出雲葡萄園」を訪問した。
そこで、ワイナリー長の安部紀夫氏から、葡萄畑を見下ろす場所やビン詰め工場、さらにはワインを熟成させる樽貯蔵室等で、地域に根差したより良いワインづくりの説明を受けた。
その後、併設されている杜のレストランに入り、奥出雲ワインを試飲しながら地元産の食材を使ったランチを食した。
続いて、同町内にある.木次乳業有限会社を訪れ、「ワイナリー奥出雲葡萄園」を立ち上げた同社の佐藤貞之代表取締役から卓話を聞いた。
佐藤氏は、奥出雲人の特徴や木次乳業の歴史・概要について紹介すると共に、食育に関することとして「食における五色・五味・五法・五感の大切さ」を強調した。
そして何よりも「子供の五感を育てることの大切さ」を訴え、身土不二という言葉の説明と共に「豊かな食は心を育むことにつながる」と結んだ。
その後、出雲大社にお参りした後、フランス料理店「ランコントレ」に移動。食事を終えて、山口雄三シェフから、出雲市の小学生たちに対する食育活動について卓話を聞いた。
同氏はプロのシェフが教える味覚を通じた食育と地産地消を推進する「しまねリトルシェフ」活動を続けており、子供たちに対しては「匂いをかいで五感を使って食べること」や「いただきます、ごちそうさまでした、という感謝の気持ちを忘れないこと」を常々指導している。
味覚の授業をした後は残すことも少なくなり、味の記憶も残っていくので、「これからも味覚の授業を続けていきたい」と語った。
2日目は、食に繋がる食器について学ぶために、出雲市斐川町出西にある「株式会社出西窯」を訪ねた。
出西窯は、昭和22年の秋に親しい5人の青年が協働して始めた陶窯として知られ、そこでは、代表取締役で陶工の多々納真氏から工場内の説明を受け、陶芸に対する思いや今後の向かう方向などの話を聞いた。
その後、工場内を見学し、作業に携わる人たちからも仕事の内容や苦労話などを聞いた。
続いて「献上そば羽根屋本店」に移動し伝統ある出雲そばをいただきながら、明治初期創業の和菓子司「なぎら長春堂」の柳樂洋一店主から、出雲市で実施している食育活動について話を聞いた。
同店主は、出雲市は和菓子文化がある町なので、「近所の子供たちが『はじめてのおつかい』に来てくれる。敷居を低くしながら、材料の小豆などは良いものを使いたい。そんな和菓子作りを店のモットーとしている」と述べると共に、「明日を担う子供たちに和菓子のことをよく理解してもらうために、公民館や幼稚園などで、和菓子づくり教室を行っている」と説明した。
そして、「小さな店だからこそ出来ることに、これからも挑戦していきたい」という熱い思いを聞いた。
最後に訪れたのは、スーパーマーケット「グッディー」。
そこで、食の関係の活動を続けている食生活改善推進協議会多伎支部の石飛なす子氏から、出雲市食のボランティア連絡協議会が発行している「~みんなに伝えたい~出雲の郷土料理」と、同氏が参加する多伎町新商品開発チームが作った「自慢の料理メニュー」について説明を受けた。
そして同氏は「子供たちには育ったところの文化や味だけでなく、いろんなことに小さなときから接してもらうことが大切だ。これからも地域の人たちと一緒になって、力を入れていきたい。皆さん方も、広島県の特徴をいかしながらその文化を将来に伝えていただきたい」と熱く語った。
こうして二日間にわたった「先進地視察会」は終わりを告げた。